message in a bottle

井椎しづく

心の中で眠っている
出せなかった手紙
声にならなかった告白
ちっちゃなボトルにつめて
そっと海に流そうか

CDを再生すれば
あのときの香りが
そのままパッケージされてる
あのときの気持ちが
そのままPLAYBACKする

あなたを好きだと
初めて気づいたのは
真夏の夜だった
むせかえるような空気の中
ライターの灯に浮かんだ横顔

いいたいことのモヤモヤ
胸にいっぱい
なんども書いては
また消して
まっしろになる

あなたの目には何も映らないの?
あなたの耳にはこの叫びが聞こえないの?
あなたの胸にはこの痛みが伝わらないの?
わかってるって言ってよ
私にはあなたが見えない

ほんの一瞬
ぶつかった視線は
今もなお
楔のように
打ち込まれたまま

あなたのくれた水
迷いもせずに
コクコク飲んだ
それがなんと
ホレ薬だったとは

もう少し
そばにいられたら
笑った横顔が見えるくらい
低い声が聞こえるくらい
もう少し

描いたとたんに
消えるから
浜辺いっぱいに
描いた
だ・い・す・き

一番話したい人と話せなかった夜
別の人と笑いあってた
一人になったその後で
心の中の後ろ姿を
追いかけた

目をつぶっていても
貴方がどこにいるか
私にはわかるよ
報いもない、救いもない
それでも思いは止められない

挨拶くらい普通にしてよ
私のこと見てもくれない
あなたの沈黙は
私を傷つける
氷のやいば

海より深い
貴方の思考回路の中で
静かに、熱く、深く沈んで
やっと巡り合えたそのときには
きっと手をつないでね

君を想う
そっと想う
強く想うとこわれるから
忘れたふりして
ふと想う

あなたのこと
好きでいてもいいでしょ?
想うのは自由だから
想いが果てるその日まで
自分から捨てたくないから

すーっと忘れられたら
きっとそれは
「時」という名の
神様がくれた
おくすり

なんだかよく似た
後ろ姿
ドキンとする
次の瞬間
しゅんとする

あなたがいなくても
私の毎日は
チッチッチッチッ と
刻まれていく
良くも悪くも

会えなくなって
時間が経って
私のキャッシュ・メモリーから
あなたが
消えた