【アート鑑賞】萬画家・石ノ森章太郎展


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石ノ森章太郎は、テレビ放送にもなった『サイボーグ009』、『仮面ライダー』や『人造人間キカイダー』『さるとびエッちゃん』『がんばれロボコン』などが有名だと思うが、ギネスに認定された「世界一多作なマンガ家」で、後進育成や地域貢献と多くの仕事、作品を残している。それでも若い人には仮面ライダーくらいしか知られていないかもしれない。

今回の世田谷文学館の展示では、パネル展示、複製画、原画のほか、作品の構想ノートや書斎の再現など石ノ森章太郎の世界を覗けるようになっている。
『サイボーグ009』のビジュアルのかっこよさは、子ども心にも記憶に残っている。
今回パネルで作品を振り返ると、世界を視野にいれた、仲間との絆とか命の問題にも迫る作品だったのだなと再認識する。

私が一番好きな石ノ森の作品は、『章太郎のファンタジーワールドジュン』である。
しかも、子どものころに出会ったのではなく、2016年石巻市の「石ノ森萬画館」を訪れた際に、3Fライブラリーコーナーで読んで一気にファンタジーワールドのファンになってしまったのだ。この「石ノ森萬画館」は石ノ森が亡くなってからその遺志をついで作られ、2011年には大きな津波の被害にもあった。そのあたりは、萬画館のサイトに詳しいのでぜひそちらも見てみてほしい。
(ちなみに、3Fのライブラリーコーナーは無料で入れる。近くにあったらまじ通い詰めたい。石ノ森章太郎以外の作品もたくさんあるのだ。)

展示の最後に、石巻からきた応援メッセージがびっしりのベニヤボードが何枚もあって、涙なしには見れない。人の思いがこんなふうに形になるって、こんなにも心を打つって、これもある意味作品だ。

今回の展示では、特にファンタジーワールドジュンの原稿やパネルがたくさんあって感激した。モノクロながら幻想的でイマジネーションが豊かで美しくて、もううっとり。たとえば、お店でプレゼントに買った馬の置物を、不思議な少女が投げ上げるとそのまま白馬に変身して、空を駆け巡る・・・・あっという間に物語の中に引き込まれて魅了される。
巨匠手塚治虫に酷評され、筆を折りそうになるも、後でそれがファンタジーワールドジュンへの嫉妬からくるものとわかったらしい。(手塚先生の嫉妬は有名だよね・・・。)

子ども向けの漫画であっても、人とは、心とは、生きるとか死ぬとか、そんなものと向き合って作品を作っているのが伝わってくる。漫画という色眼鏡で石ノ森作品を避けてはほんとうにもったいない。

館内にスタンプラリーがあって、スタンプが押せるのだが、このクオリティがはんぱない。すり減ってないからかもしれないけど、こんなに鮮やかに押せるスタンプみたいことない!

良かったら、初めての方こそ石ノ森章太郎に出会ってほしい。『章太郎のファンタジーワールドジュン』にも。
6月30日まで。